PRESS RELEASE
「ブランドMETHODに触れる1日」実施レポート
トップマーケターが集結するカンファレンス「ダイレクトアジェンダ2024」のキーノートで「ライフスタイルの時代からライフスタンスの時代へ」と題して、弊社取締役の中川淳(中川政七商店 代表取締役会長 中川政七氏)がスピーカーとして登壇。
「マーケティング」と「ブランディング」の捉え方の違いや、企業として大切にするべき姿勢やスタンス、消費者行動が「ライフスタイル」から「ライフスタンス」へになりつつある現代、企業が持つべき大切な視点などをお伝えさせていただきました。
その内容などをさらに深掘りするため、「ブランディングMETHODに触れる1日」と題して5月14日に実施したワークショップの模様をレポートします。
参加者の満足度
ご参加いただいた皆様に、ワークショップ終了後に満足度をお伺いしたところ、【とても満足】が86%、【満足】が14%という結果となりました。
一方で、コンテンツ自体は非常に満足だったものの、コンテンツの密度が高いが故に、集中力を保つことが厳しく感じたというご感想もいただきました。
次回以降の開催時には、休憩時間などをもう少し長く挟む等を実施しようと思います。
開催概要
タイトル:ブランディングMETHODに触れる1日
場所 :鹿猿狐ビルヂング 3階 JIRIN(奈良県奈良市元林院町22 鹿猿狐ビルヂング)
中川政七商店 奈良本店が入る「鹿猿狐ビルヂング」。その3階にコワーキングスペース「JIRIN」があります。3階に上がるエレベーターホールでは、鹿猿狐がお出迎え。
プログラム
【第一部】
中川政七商店のMONJU活用事例
講師:中田 勇樹氏 中川政七商店コミュニケーションデザイン室兼MONJUプロジェクトマネージャー(企画責任者)
【第二部】
中川淳と考えるブランディングの本質
講師:中川 淳(MONJU取締役 中川政七商店会長)
【第三部】
自社のブランドポジショニングマップ(β版)を作ってみる
講師:西本 章宏氏(関西学院大学商学部教授)
第一部
BRAND GAP SOLUTION「MONJU」の共同企画開発をし、実際に日々の業務にプロダクトを活用いただいている中田氏。「MONJU」にどのようなデータをインプットし、商品政策や商品戦略に活かすためにどのようなデータの見方/切り口で分析しているのかについて、具体例をあげつつお話しいただきました。中田氏のお話の一部をご紹介します。
|MONJU開発の経緯と課題
中川政七商店では、現在会員数が70万人、メルマガ会員が30万人、LINE会員も30万人に達しています。会員数が多いので、メールやLINEを通じたコミュニケーションの実施だけでも、売上効果が見られるのではとCRM施策を実施したものの、実施にかかる労力に対しての売上効果が期待ほど上がりませんでした。中川政七商店では、多品種の商品を扱っていますが、1商品あたりの在庫が限られているため、細かいセグメントを設定してのCRMはROIがなかなか合いづらいことを実感しました。
例えば、100人のセグメントに対して商品の良さを分かってもらえるようなメールを送ったとしても、開封率50%、クリック率10%、コンバージョン率1%という程度。結果的に、一つのセグメントから得られる売上はほとんどない状況でした。これにより、従来のCRMアプローチではLTV(ライフタイムバリュー)を大きく向上させることが難しい、アプローチやKPI設定の見直しが必要だと判断しました。
|MONJUの活用事例と共通言語の整備
そこで「MONJU」を活用して、社内の共通言語の整備をすることに。
以前は、商品開発、販促、店頭の各部門が異なるKPIを持っていたため、コミュニケーションが断絶しがちでした。例えば、販促部門は開封率やクリック率、コンバージョン率を重視し、商品開発部門は在庫回転率や売上を重視しているなど、各部門が異なる指標を追いかけていると、全社的な一貫性が欠け、効果的なブランディングが難しくなります。
しかし「MONJU」を活用することで、全ての部門が同じデータと指標を共有することが可能になり、各部門が共通のKPIを持つことで、全社的な目標に向かって統一した戦略を実行することができるようになりました。例えば、商品の在庫状況や売上データを共有することで、販促部門は在庫を考慮したプロモーションを行い、商品開発部門は売上データを基にした商品企画を行うことができます。
このように、「MONJU」を活用し共通言語を整備することで、部門間の連携を強化し、全社的なブランディング戦略を実現しています。
|ブランディングの強化と一貫性の確保
また「MONJU」を活用することで、全てのチャネルで一貫したメッセージを伝えることが可能となりました。例えば、新商品が発売される際には、メール、ウェブサイト、ソーシャルメディアなど、どのチャネルでも同じ情報を発信。これにより、顧客がどこで情報を得ても同じ体験をすることができ、ブランドの一貫性を保つことができるようになっています。
さらに、「MONJU」のBI機能を活用して、顧客の行動データを分析し、各種施策の最適化。具体的には、どのセグメントの顧客が最も利益を生み出しているか、どのキャンペーンが最も効果的であるかを把握し、各種リソースを最も効果的に活用できるようにしています。これにより、ROIを最大化し、顧客満足度を高めることが可能となりました。
次に、「MONJU」開発者責任者の西尾から、現在開発中のクラスタリング機能についてお話しさせていただきました。
|クラスタリング機能の目的とその必要性
クラスタリング機能は、顧客理解を深めるための分析に重点を置いたものにしたいと考えています。
顧客理解のための分析では、顧客を分けて比較することが重要です。我々は顧客をCRMデータ(行動データ)を使って機械的に分類するアプローチ(クラスター)をとっています。機械的に分類したとしても例えば、男性と女性、若年層と高齢層といった切り口でクラスターを比較すると特徴はでてきます。これにより、企業は「うちのお客様はこういうお客様なんだ」という顧客構造を理解して、今後のマーケティング施策やプロトタイプの開発に活用できます。顧客の分類はどうしても恣意的な要素が含まれるの組織的な納得感は得られにくいですが、機械的にクラスタリングを行うことで、合意形成が得やすくなると考えています。
|クラスタリング機能の特徴
クラスタリング機能の特徴のひとつとして、各種顧客データから多角的かつ自動的に顧客のクラスターを発見できる機能があげられます。クラスター発見プロセスは自動的に行われますが、ユーザーによるカスタマイズも可能とする予定です。作成されたクラスターは、様々な可視化手段で特徴を読み取れるようにし、データが追加されるたびに自動更新されるような設計を予定しています。
第二部
BRAND GAP SOLUTION「MONJU」には、中川政七商店 会長で弊社の取締役でもある中川淳のブランディングMETHODが詰まっています。
そんな中川淳が考える「ブランディングの本質」についてお話しいただきました。一部をご紹介します。
|ブランドの作り方と運用についての基本的な考え方
ブランドの作り方と運用の仕方は密接に関連していますが、異なるアプローチが必要です。
まず、ブランドの構造をしっかりと作り、ブランディングの運用フェーズに入る前には、「ブランドをどのように作るか」というブランドの建付けが重要。
ブランドの建付けは、商品の幅や価格、流通、ポジショニングを考えることから始まります。具体的には、自社が単品ブランドか総合ブランドかを選択し、商品のイメージや市場でのポジションを決めていきます。
例えば、中川政七商店のように総合ブランドとして戦う場合、そのブランドの特性や歴史を活かし、消費者にどのように認識されたいかを考えることから始めます。
このブランドの建付けがしっかりしていないと、運用フェーズで効果を発揮できません。
|ブランドの建付け
ブランドの建付けには、以下の要素が重要です。
- 商品カテゴリーの選定: どのカテゴリーで戦うかを決める。ブランドのイメージや特性に合ったカテゴリーを選ぶことが重要。
- 価格帯の設定: ブランドの価格帯を決める。価格帯はブランドイメージに直結するため、慎重に考える必要がある。
- 流通戦略: 商品をどのように消費者に届けるかを考える。オンラインショップをメインにするのか、実店舗を展開するのかなど、流通戦略は、消費者との接点を作る重要な要素。
- ポジショニング: 競合他社との差別化ポイントを明確にする。自社の強みを生かし、消費者にどのように認識されたいかを決める。
|ブランドの運用フェーズ
運用フェーズでは、ブランドを消費者に認知してもらい、信頼を築くことを目的として、以下のステップで進めます。
- プロモーション: ブランドを広く知ってもらうための戦略として、SNSや広告、PR活動を通じてブランドの認知度を高める。特にオンラインでのプレゼンスが重要。
- 顧客体験の提供: ブランドのファンを増やすために顧客体験を重視し、購入後のフォローアップやカスタマーサポートを充実させ、リピーターを増やす。例えば、商品の適切な使用方法やお手入れの仕方を紹介することで、顧客に価値を提供する。
- コミュニティの構築: ブランドに共感する消費者同士のコミュニティを構築し、SNS上での交流やイベントの開催を通じて、ブランドのファンを増やす。消費者同士のつながりが強まることで、ブランドのロイヤルティも高まる。
- データの活用: 顧客データを活用して、マーケティング戦略を最適化。顧客の購買履歴や行動データを分析し、個別対応やパーソナライズドなサービスを提供することで、顧客満足度が向上し、ブランドの価値が高まる。
第三部
BRAND GAP SOLUTION「MONJU」に搭載予定の、ブランドポジショニングマップ。
その共同開発を行っていただいている、マーケテイングにおける第一線の研究者である関西学院大学 西本教授から、現在のブランディング事情をご紹介いただいたあと、参加者様に自社のブランドポジショニングマップを作成いただきました。その一部をご紹介します。
|インナーブランディングの重要性
ブランドとは、企業や商品のイメージをどう思っていただけるかという状態のことで、ブランディングはそのイメージをポジティブに変えていくことです。
そんなブランディングの中で、インナーブランディングの重要性も増してきています。
例えば、Soup Stock Tokyo。Soup Stock Tokyoは「世の中の体温を上げる」というパーパスを掲げ、これを企業全体に浸透させるためのインナーブランディングに注力しています。
例えば、Soup Stock Tokyoは「共感のネットワークを広げる」ことを重要視。従業員同士が共感し合い、企業全体で同じ価値観を共有することで、より強固な組織文化を築くことを目的としています。
従業員が企業の価値観を理解し、それを日常業務に反映させることで、顧客に対して一貫性のあるブランド体験を提供することができています。
このように、インナーブランディングの成功により、企業のブランド価値が向上し、社会的な信頼を得ることで、競争力を維持し、持続可能な成長を遂げています。
|ブランドポジショニングマップのデモンストレーション
ブランドポジショニングマップは、市場におけるブランドの位置づけを視覚的に表現したものです。ブランドがどのように消費者によって認識されているか、それと自らの認識のギャップはどのぐらいあるのか、あるいは競合他社とはどのような認識の違いがあるのかなどを可視化することを目的としています。
ワークショップでは、実際にエクセルを利用し、参加者に簡単なポジショニングマップを作成いただきました。
|ポジショニングマップの構成要素
- 軸 (Axes):
- X軸とY軸: 例えば、品質(低いから高い)と価格(低いから高い)など
- ブランドのプロット (Brand Plotting):
- 各ブランドがどこに位置するかを示す点やマーク。ブランドが特定の属性においてどのように見られているかが視覚的に分かる。
|ブランドポジショニングマップの活用方法
- 競合分析:
- 競合ブランドと自社ブランドの位置を比較することで、どの分野で競争が激しいか、どの分野に新しい機会があるかを見つけられる。
- 戦略策定:
- ブランド戦略やマーケティング戦略を策定。例えば、空白地帯を見つけて新しい製品を投入するなどの戦略が考えられる。
- ブランドの強化:
- 自社ブランドがどの属性において強みを持っているか、またどの属性において改善が必要かを把握し、ブランド強化のための具体的な施策を計画できる。
最後に
今回実施したワークショップ「ブランドMETHODに触れる1日」は、中川淳が考えるブランディングやブランディング手法、中川政七商店での「MONJU」活用例を学ぶ機会となりました。
ご参加いただいたみなさまの満足度はとても高く、ブランディングについて深く理解できたとのお声を多くいただいております。
今後もブランディングMETHODを学んでいただけるようなワークショップを開催し、ブランド戦略を強化するための具体的な方法を学べる場を提供したいと思います。